運用中のECからShopifyへ乗り換えるとき、いちばん手間がかかるのがデータ移行です。Shopifyの公式ヘルプでは、商品→顧客→過去の注文の順でインポートするよう案内されています。商品と顧客はCSVで移せますが、顧客のパスワード・過去の注文・ポイント・定期購入はCSVだけでは移せません。
この記事では、Shopifyパートナーである弊社が、移行の全体像と進め方、商品・顧客データの移行手順、EC-CUBEから移行する場合のポイント、公式ヘルプだけでは分かりにくい注意点をまとめます。最後に「自社で対応できるケース」と「専門会社に相談したほうがよいケース」の判断の目安と、相談前に整理しておきたい項目も紹介します。
※2022年2月公開の記事を、2026年9月時点のShopify公式ヘルプをもとに全面的に更新しました。記事内の管理画面・CSVの画像は2022年2月に弊社で作業したときのもので、現在の画面とは異なる場合があります。
まず確認:Shopifyへ移せるデータ・移せないデータ
作業を始める前に、どのデータがどの方法で移せるのかを整理しておくと、見積もりやスケジュールを立てやすくなります。
- 商品データ:CSVでインポートできる(商品名、価格、説明、バリエーション、在庫、画像など)
- 顧客データ:CSVでインポートできる(氏名、メールアドレス、住所、電話番号、メール配信の同意など)
- 顧客のパスワード:移行できない
- 過去の注文データ:CSVだけでは移行できない(移行アプリまたはAPIが必要)
- ポイント残高:Shopifyの標準機能にポイントがないため、ポイントアプリ側で移行する
- 定期購入の契約・カード情報:CSVだけでは移行できない(アプリ・Shopifyへの依頼が必要)
- 旧サイトのURL:URLリダイレクトを設定して引き継ぐ(CSVで一括登録も可能)
データ移行をしなくてもよいケース
新しくShopifyでECを立ち上げる場合
移すデータがそもそもないため、データ移行は不要です。商品は管理画面から登録していきます。
既存ECの商品・顧客データが少ない場合
データが少ない場合は、無理に移行する必要はありません。弊社の目安では、それぞれ20件程度までなら、CSVを整えるより手作業で登録したほうが手間がかからないことが多いです。
移行の全体像:公開までの進め方
Shopifyの公式ヘルプでは、商品→顧客→過去の注文の順でのインポートが推奨されています。この順番にすることで、商品と顧客が注文に正しく紐付きます。これをふまえた、弊社が考える進め方の例です。
- ① 棚卸し:移すデータの種類と件数(商品数・会員数・ポイント・定期購入・注文履歴・旧URL数)を洗い出す
- ② 方式の決定:顧客アカウントの種類、ポイントアプリ、定期購入アプリを決める
- ③ テストインポート:少量のデータで取り込み、商品ページや顧客情報の表示を確認する
- ④ 本番インポート:商品→顧客→(必要なら)注文の順で取り込む
- ⑤ 差分の取り込み:旧ECは切り替えまで動いているため、本番インポートの日時以降に登録・更新された会員と注文だけを抽出し、切り替え直前に追加で取り込む(登録済みの会員の情報を更新する場合は、後述の上書きの設定に注意)
- ⑥ URLリダイレクトの登録:旧URLから新URLへの転送を設定する
- ⑦ ドメインの切り替え・公開
- ⑧ 既存会員への案内:ログイン方法が変わることや、ポイントの扱いをメール・サイト上で知らせる
URLリダイレクトが必要な理由
Shopifyでは、商品ページは「/products/」、商品一覧は「/collections/」、固定ページは「/pages/」のように、URLの形が決まっています。そのため、旧ECのURLの多くは移行後に変わります。公式ヘルプでも、旧URLのままだとお客様がエラーページにたどり着くため、ドメインをShopifyへ切り替える前にURLリダイレクトを設定するよう案内されています。リダイレクトは管理画面から1件ずつ作成するほか、CSVで一括登録することもできます。
移行方法は2通り:移行アプリか、CSVへの変換か
移行アプリを使う
移行元のECによっては、Shopify App Storeに専用の移行アプリがあります。Shopify公式の移行ガイドは、Amazon、Etsy、eBay、Squarespace、Wix、WooCommerceなど海外のプラットフォームが中心です。国内のカートシステムから移行する場合は、App Storeで移行元の名前を検索し、移せるデータの範囲と対応バージョンを確認してください。アプリの提供状況は変わることがあるため、導入前に掲載ページで最新の情報を確認することをおすすめします。
Shopify形式のCSVに変換する
アプリがない場合や、アプリの対象外のデータを移す場合は、旧ECのデータをShopifyが指定するCSV形式に変換します。データの取り出し方は大きく3つです。
- ①データベースから直接CSVを出力する:手間は最も少ないですが、データベースを操作する知識が必要です。社内にエンジニアがいる場合に向いています。
- ②旧ECのCSVダウンロード機能を使う:出力自体は簡単ですが、Excelなどで列名や形式をShopify用に組み替える作業が発生します。
- ③管理画面から1件ずつコピーする:件数が少なければ対応できますが、件数が増えるほど現実的ではなくなります。
EC-CUBEから移行する場合
EC-CUBEからの移行は、商品と顧客で方法が分かれます。
- 商品データ:EC-CUBE 4系であれば、商品データを移行できる無料アプリ「商品データ移行 from EC-CUBE」がShopify App Storeで公開されています。EC-CUBEの管理画面から出力した商品CSVをアップロードする仕組みです。対象は商品データのみで、4系以外のバージョンはアプリの掲載ページで対応状況を確認してください。
- 顧客データ:EC-CUBE 4の管理画面では会員一覧をCSVで出力できます。出力される項目には、お名前(姓・名)、郵便番号、都道府県、住所、メールアドレス、電話番号、ポイントなどがあります。これをShopifyの顧客CSVの列(First Name、Last Name、Email、住所の各列、Phoneなど)に組み替えます。
EC-CUBE 4の標準設定では、CSVはShift_JIS(SJIS-win)で出力されます。一方、Shopifyの顧客CSVはUTF-8でなければ取り込めません。ExcelやテキストエディタでUTF-8に変換してから取り込んでください。変換を忘れると、氏名や住所が文字化けする原因になります。なお、EC-CUBEのポイントは顧客CSVではShopifyへ移せないため、後述のポイントアプリ側で移行します。
商品データの移行手順と注意点
商品データとは
商品名、価格、JANコード、商品説明、在庫数、商品画像など、ECで販売する商品の情報です。アパレルや食品のECは商品数が多くなりやすく、データ移行が必要になるケースが多いです。
基本の手順は公式ヘルプを参照
商品CSVの各列の意味や作り方は、Shopify公式ヘルプの商品CSVファイルの使用にまとまっています。弊社もこちらを参考にしていますが、実際に作業して迷った点を補足します。
注意点①:商品画像のURLは既存サイトのURLでも読み込める
商品CSVの「Image Src」(商品画像のURL)には、Shopifyの管理画面の「ファイル」にアップロードした画像のURLを指定する必要がある、と弊社は当初考えていました。


しかし、2022年2月に弊社で作業した際は、既存サイトの商品画像URLを指定しても読み込めました(下の画像はそのとき使ったCSVの例です)。現在の条件は公式ヘルプのとおりで、外部の画像URLはhttpsで始まり、パスワード保護なしで誰でもアクセスできる状態であれば使えるとされています。旧サイトを閉鎖する前にインポートを済ませること、旧サイトにBasic認証などをかけていないことを確認してください。なお、公式にはShopifyの「ファイル」にアップロードしたURLの利用が推奨されています。

注意点②:1つの商品に複数の画像を登録する方法
1つの商品に複数の画像を登録するときは、CSVの書き方に工夫が必要です。使う列は「Handle」「Image Src」「Image Position」の3つです。
- Handle:商品を識別するID(商品ページのURLにも使われます)。同じ商品の画像は、すべて同じHandleにします。
- Image Src:画像のURL。1行につき画像1枚を指定します。
- Image Position:画像の表示順。1から始まる数字で指定します。
2枚目以降の画像は、行を追加してHandleをコピーし、Image SrcとImage Positionを入力します。商品名などの情報は1行目にだけ入れれば問題ありません。1商品に登録できる画像は最大250枚です。

注意点③:色・サイズなどバリエーションがある商品
色やサイズのバリエーションがある商品も、画像と同じく同じHandleで行を分けて書きます。1行目に商品の情報をすべて入れ、2行目以降はHandleとバリエーションの情報を入れます。
- Option1 Name / Option1 Value:バリエーションの種類(例:カラー)と値(例:ブラック)。オプション(カラー・サイズ・素材などの種類)は、Option1〜Option3の最大3つまで設定できます
- SKU・価格・在庫数:バリエーションごとに1行ずつ入れます
旧ECで「色×サイズ×素材×長さ」のように4種類以上のオプションを使っている場合は、商品を分けるなど、Shopifyに合わせて商品の構成を見直す必要があります。
顧客データの移行手順と注意点
顧客データとは
お客様がECで会員登録したときの情報です。氏名、電話番号、住所、メールアドレス、パスワード、ポイント情報などが含まれます。
顧客データを移さずにShopifyへリニューアルすると、既存のお客様にもう一度会員登録してもらうことになります。住所などを入力し直すのは意外と負担が大きく、購入をやめてしまう原因にもなります。そのため、顧客データはできる限り移行することをおすすめします。
基本の手順は公式ヘルプを参照
顧客CSVの作り方は、Shopify公式ヘルプのCSVファイルを使用して顧客をインポート・エクスポートするにまとまっています。作業前に押さえておきたい条件は次のとおりです。
- ファイルは15MB以下・UTF-8形式で保存する
- 同じメールアドレス・電話番号が複数行ある場合、最後の行だけが取り込まれる
- 登録済みの顧客の情報を更新したい場合は、インポート時に、同じメールアドレス・電話番号の既存顧客を上書きするオプションにチェックを入れる。チェックすると、その顧客のデータはCSVの内容ですべて置き換わる
- メール配信の同意(Accepts Email Marketing)は「yes」か「no」で入力する。同意を得ていないお客様にメールマガジンを送らないよう、旧ECの同意状況をそのまま反映させる
注意点①:パスワードは移行できない。「有効化」の手順は顧客アカウントの種類で変わる
顧客のパスワードは暗号化されているため、CSVでは移行できません。移行後にお客様がログインできるようにする手順(いわゆる「アカウントの有効化」)は、ストアで使っている顧客アカウントの種類によって変わります。
- 新しい顧客アカウント:メールアドレスと、メールで届くワンタイムパスコードでログインする仕組みです。パスワードがないため、パスワードを設定してもらう招待メールは必要ありません。
- レガシー顧客アカウント(従来型):お客様にパスワードを設定してもらう必要があり、アカウントの招待メールを送ります。この招待メールは、レガシー顧客アカウントが有効なストアでのみ機能します。なお、レガシー顧客アカウントは現在、Shopifyで非推奨とされています。
それぞれの仕組みは、Shopify公式ヘルプの顧客アカウントのページで確認できます。自社ストアがどちらの方式を使っているかも、移行前に確認しておきましょう。
2022年2月に弊社で作業した際は、当時の従来型の顧客アカウント(現在のレガシー顧客アカウント)で、管理画面の顧客詳細ページにある「アカウントの招待を送信する」から招待メールを送りました。現在の画面では、表示名や位置が異なる場合があります。

移行した顧客が数百人、数千人になると、1人ずつ招待を送るのは現実的ではありません。Shopify App Storeには、一括で招待メールを送れるアプリが複数あります。以前この記事で紹介した公式ヘルプの「Bulk Account Inviter」は、2026年9月時点で専用の案内ページが見当たらなくなっています。
これから移行する場合は、パスワードの再設定が不要な新しい顧客アカウントを前提に設計すると、お客様・運営者双方の負担を減らせると弊社は考えています。どちらの方式でも、既存の会員には「ログイン方法が変わること」をメールやサイト上のお知らせで伝えておくと、問い合わせや離脱を防ぐ助けになります。案内メールが迷惑メールに振り分けられないよう、送信ドメインの認証も済ませておきましょう(参考:Shopifyからのメールが迷惑メールに振り分けられる時の対策方法)。
注意点②:ポイントはShopifyの標準機能にないため、アプリ側で移行する
Shopifyにはストアクレジット(お客様が決済時に使える残高)の機能はありますが、一般的な「購入金額に応じて貯まるポイント」の標準機能はありません。ポイントを使うにはポイントアプリを導入します。
Shopifyの顧客CSVにはポイントの列がないため、ポイント残高はポイントアプリ側の機能で移行します。アプリによっては、指定形式のCSVで他社ECの保有ポイントを一括で取り込めるものもあります。アプリを選ぶ段階で「既存ポイントの移行に対応しているか」「移行の方法と費用」を必ず確認してください。
過去の注文データ・定期購入の移行
過去の注文データ
過去の注文データは、CSVだけでは移行できません。移行アプリか、ShopifyのAPIを使う必要があります。また、注文をインポートすると、新規注文の通知を受け取る設定になっているスタッフ(ストアの所有者を含む)に、取り込んだ注文1件ごとに通知メールが届きます。インポート前にスタッフ向けの新規注文通知をオフにし、完了後に戻してください。
注文履歴を移す必要があるかは、「マイページで過去の購入履歴を見せたいか」「リピート分析に使いたいか」で判断します。分析に使うだけであれば、旧ECのデータを別に保管しておく方法もあります。
定期購入
定期購入(サブスクリプション)の引き継ぎは、データ移行の中でも特に難しい部分です。公式ヘルプによると、保存済みのカード番号そのものの移行はShopify PlusまたはEnterpriseプランで、Shopifyに依頼して行います。決済トークンの移行は、定期購入アプリの開発元の協力を得て行います。定期購入の契約は、顧客データを取り込んだうえで、APIやアプリを使って作り直します。
定期購入がある場合は、アプリを選ぶ段階で「既存の契約の移行に対応しているか」を確認することが欠かせません。定期購入アプリについては日本製の定期購買アプリを使ってみた記事も参考にしてください。
自社で対応できるケース・専門会社に相談したほうがよいケース
ここまでの内容をふまえて、弊社が考える判断の目安をまとめます。
自社で対応しやすいケース
- 商品・顧客の件数が少ない(それぞれ数十件程度)
- 移行元に対応した移行アプリがあり、移したいデータがアプリの対象範囲に収まっている
- ポイント・定期購入・注文履歴の移行が不要
- Excelでの列の組み替えや文字コードの変換、データの確認作業に社内で時間を割ける
専門会社への相談を検討したほうがよいケース
- 会員数が多く、ログイン方法(顧客アカウントの種類)の選択や会員への案内の設計が必要
- ポイント残高、定期購入、過去の注文履歴を引き継ぎたい
- 商品数が多く、オプションが4種類以上あるなど、商品の構成を見直す必要がある
- 旧サイトの検索順位を落とさないよう、URLリダイレクトを漏れなく設定したい
- 移行アプリがないカートシステムで、データベースからの出力が必要
相談・見積もりの前に整理しておきたい項目
自社で進める場合も、専門会社に相談する場合も、次の項目を書き出しておくと必要な作業量が見えてきます。
- 移行元のカートシステム名とバージョン
- 商品数(バリエーションを含むSKU数)
- 会員数と、メール配信に同意している会員の数
- ポイントの有無と、残高・付与ルール
- 定期購入の有無と、利用している決済サービス
- 過去の注文履歴を移す必要があるか
- 旧サイトのおおよそのページ数(URL数)
- 希望する公開時期
この一覧が埋まっていれば、弊社へのご相談でも具体的なお話がしやすくなります。一部が分からなくても構いません。
あわせて、Shopifyでサイトを構築する際の注意点はShopifyサイト構築時の注意で、Webサイトのリニューアル全般でのデータ移行はWebサイトリニューアル時のデータ移行の記事で解説しています。
まとめ
- 移行は「商品→顧客→過去の注文」の順で進め、切り替え直前に差分を取り込む
- 商品・顧客はCSVで移せるが、パスワード・注文履歴・ポイント・定期購入はCSVだけでは移せない
- EC-CUBEのCSVはShift_JISで出力されるため、UTF-8に変換してから取り込む
- ログインの「有効化」の手順は、新しい顧客アカウントかレガシー顧客アカウントかで変わる
- ドメインを切り替える前にURLリダイレクトを設定し、旧URLからのアクセスを引き継ぐ
弊社はShopifyパートナーとして、ECサイトの制作や移行のご相談を承っています。グループ会社で化粧品ECを運営した経験もあり、運営する側の視点も交えてご提案します。
「うちの場合は何を移せばいいのか」「自社でできそうか見てほしい」といったご相談だけでも構いません。お気軽にお問い合わせください。
