目次
はじめに
越境ECにおいて「中国人のお客様がサイトに来ているのに、なぜか買ってもらえない」というお悩みを抱えるEC担当者の方は多いのではないでしょうか。
実は、その原因の多くは決済手段にあります。
中国ではクレジットカードよりも、スマートフォンを使ったQRコード決済が主流です。代表的なのが「Alipay(アリペイ)」と「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」の2つ。この2つに対応していないECサイトは、中国人ユーザーにとって「使えないサイト」と映ってしまい、カゴ落ちにつながりやすいのです。
今回は、弊社が支援した自社制作のECサイトへのAlipay・WeChat Pay導入事例をご紹介します。技術的な話は極力省き、EC担当者・web担当者が知っておくべきポイントに絞ってお伝えします。
導入事例の概要
クライアント:アパレルのECサイト運営企業
サイト: 完全自社制作のオリジナルECサイト
導入した決済: Alipay(支付宝)・WeChat Pay(微信支付)
利用した決済代行: KOMOJU(コモジュ)
対応期間: 約2ヶ月
なぜ導入したのか|背景と目的
店舗には来てくれるのに、ECでは買ってもらえない
このクライアントの実店舗には、中国人のお客様が多く来店していました。商品への関心も高く、スタッフとのやり取りも積極的です。そこで「ECサイトでも購入できますよ」と案内するようにしていました。
ところが、実際にECサイトで購入まで至るお客様はほとんどいませんでした。サイト自体への興味はあるものの、いざ購入しようとすると決済の段階で離脱してしまうという状況が続いていたのです。
原因はシンプルでした。中国の方が日常的に使っている決済手段に対応していなかったのです。
日本ではクレジットカードや銀行振込が一般的ですが、中国ではAlipayとWeChat Payがすでに生活インフラとして定着しています。コンビニも飲食店も、日々の支払いはほぼスマホで完結する文化です。これらが使えないECサイトは「不便」「使い方がわからない」と感じられ、購入をためらわれてしまいます。
せっかく店舗でファンになってくれたお客様を、決済の壁でECから遠ざけてしまっていた——それがこの施策に取り組むことになった出発点です。
導入の目的
・店舗に来てくれる中国人のお客様にECでもリピート購入してもらいたい
・中国人のお客様が使い慣れた決済手段を整えて、購入のハードルを下げたい
・店舗とECを組み合わせた購買体験を作りたい
導入に期待していること|メリット
現在は本番稼働に向けて準備中のため、以下は導入の目的や他社事例をもとに期待していることをご紹介します。
1. 中国人ユーザーの購入率が上がることへの期待
アクセスはあるのに買われない——その原因が「使える決済手段がない」ことであれば、対応するだけで購入率が改善する可能性があります。まずは「買える環境を整える」ことが最初の一歩です。
2. SNSでの口コミ・拡散につながる可能性
「日本のサイトなのにAlipayで払えた」という体験は、WeiboやXiaohongshuなど中国のSNSでシェアされやすいと言われています。広告費をかけずとも、決済対応が口コミの起点になる可能性があります。
3. 不正利用のリスクが低い
AlipayもWeChat Payも、利用者の本人確認が厳格に行われています。クレジットカードで問題になりがちな「チャージバック(不正利用による返金請求)」のリスクが低い点は、運用面での安心材料のひとつです。
4. 実店舗との相乗効果も見込める
実店舗でも同じQRコード決済に対応すれば、オンラインとオフラインで一貫した購買体験を提供できます。「店舗で気に入ってそのままECでもリピート購入」という流れが生まれることも期待しています
導入前に知っておきたいこと|デメリット・課題
1. 審査に時間がかかる
導入するには、決済代行会社を通じた審査が必要です。今回はKOMOJU(コモジュ)という決済代行サービスを利用しました。KOMOJUはAlipayとWeChat Payをはじめ、コンビニ払いなど日本の決済にも幅広く対応しており、日本語でサポートを受けられる点が決め手でした。
ただし、審査書類の準備から利用開始まで数週間かかることがあります。「来月から使いたい」というスケジュールは難しいので、早めに動き出すことが重要です。
2. 決済手数料がかかる
決済のたびに、取引金額の数%が手数料として引かれます。サービスによって異なりますが、クレジットカードと同程度か少し高いくらいのイメージです。なお、注文キャンセル等による返金においても、手数料は事業者に返金されません。価格設定や利益計算に事前に織り込んでおきましょう。
3. 返金・キャンセルの手続きの期限あり
返金できる期間に制限があるため、カスタマーサポートのオペレーションも事前に整理しておく必要があります。
EC・web担当者が押さえておくべき注意点
ここでは、システムの話を抜きにして、担当者として知っておくと役立つ現実的な注意点をまとめます。
① 審査・導入準備は早めにスタートする
「決済追加はすぐできるでしょ」と思われがちですが、審査・契約・設定・動作確認まで含めると最低でも1〜2ヶ月は見ておく必要があります。キャンペーンや繁忙期に合わせて導入したい場合は、逆算してプロジェクトを動かすことが欠かせません。
② テスト・動作確認には「中国人の協力者」が必要
これは多くの担当者が盲点になりやすい点です。
AlipayとWeChat Payは、日本人はテスト決済を行うことができません。
アプリをダウンロードしてアカウントを作ることは誰でもできます。しかし、実際に決済を完了させるには「中国の銀行口座」との紐付けが必要で、これは中国の金融制度の仕組みにより日本人には取得できません。アカウントを作っても、決済ボタンを押せない状態になるのです。
さらに、KOMOJUのテスト環境もAlipay・WeChat Payには対応していません。クレジットカードやコンビニ払いなら模擬テストができますが、この2つの決済については本番環境でしか動作確認ができない仕様です。
つまり、動作確認には中国の銀行口座を持つ人(在日中国人のスタッフや知人など)に実際に決済してもらう必要があります。プロジェクト計画の段階で、協力者を確保しておくことをお勧めします。
③ 「決済だけ」対応しても離脱は続く
Alipay・WeChat Payを導入しても、商品ページやカートが日本語のみだと、中国人ユーザーはやはり迷って離脱してしまいます。決済対応と合わせて、言語の表記対応も進めておくと、より高い効果が期待できます。翻訳ツールの活用も含め、段階的に進めるのが現実的です。
④ 売上の入金は円建て・日本円で受け取れる
「中国の通貨(人民元)で入金されるの?」と心配される方もいますが、KOMOJUを通じた場合、売上は日本円で入金されます。為替換算や外貨口座の準備は不要です。担当者が経理と連携する際も、通常の売上と同じ扱いで問題ありません。
スムーズに進めるために意識したこと
本番稼働に向けた準備を進める中で、特に重要だと感じたのは次の3点です。
1. 決済代行にKOMOJUを選んだこと
AlipayとWeChat Payを一括で導入できるうえ、コンビニ払いや国内決済にも対応。日本語でサポートを受けられるため、担当者と制作会社の間で認識のズレが起きにくく、進行がスムーズでした。
2. 決済対応と表記対応を並行して進めたこと
決済だけ対応しても、サイト自体が日本語のみでは離脱が続きます。弊社の場合、商品説明・カート・メールの一部を英語表記にする作業も同時に進めることで、本番後の効果を最大化できる準備が整いました。
3. 動作確認の協力者を早めに確保したこと
日本人はAlipay・WeChat Payの決済テストができないため、在日中国人スタッフに依頼して実機確認を行う段取りを早めに組みました。この準備があることで、本番リリースのスケジュールを崩さずに進められています。
まとめ
Alipay・WeChat Payの導入は、中国人ユーザーの購入率を上げるうえで非常に効果的な施策です。一方で、審査期間・テスト環境の制約・言語対応など、事前に知っておかないと計画が狂いやすいポイントもあります。
「うちのサイトでも対応できるの?」「どのくらいの期間・費用がかかる?」といったご相談は、お気軽にお問い合わせください。お客様のサイト状況をヒアリングしたうえで、現実的なご提案をいたします。
※審査状況・手数料・仕様はサービスや時期によって異なります。最新情報をご確認ください。